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13th ALBUM

I Have a Dream.

2023.2.8 OUT

I Have a Dream. ――DJ RYOWが約2年ぶりにリリースした13thリーダーアルバムには、こんなタイトルが付けられている。非常にシンプルな4単語の英文ではあるが、この言葉には大きなパワーが秘められているのだ。ご存知の方も多いと思うが、これは翌年にノーベル平和賞を受賞することとなるマーティン・ルーサー・キング牧師が、1963年の夏にアメリカの首都・ワシントンDCで行なった歴史的演説の一節。非暴力の公民権運動に尽力していたキング牧師はその日、約25万人にも及ぶ観衆の前で「私には夢がある」と人種差別の撤廃を訴えた。1968年に39歳の若さで凶弾に倒れるまで“夢”を追い続けたキング牧師の決意に、DJ RYOWは自らを重ね合わせたのである。

「“Dream”っていうワードは毎回アルバムタイトルに入れとるし、今回も入れたいとは思っとって。自分はずっとヒップホップが好きで、それに対して追い求めとる“夢”ならいっぱいあるし。そういう部分がいつまで経っても変わらんなって感じた時に、なんとなくこのタイトルが浮かんだ。でも正直、こんな分かりやすいタイトルでいいのかなっていう迷いもあったんだけど、そんな中で(¥ellow)Bucksたちとニューヨークに行ったタイミングが、たまたま“Martin Luther King Jr. Day(キング牧師記念日)”の前後だったんだよね。タイムズスクエアにキング牧師の銅像が置かれたりして街が盛り上がっとるのを見て、『カッコつけずにストレートなこのタイトルにしよう』ってスッと飲み込めた」

DJでありプロデューサーでもあるDJ RYOWは、ラッパーやシンガーたちと違って、当然アルバムに収録された楽曲でその思いを語ることは難しい。しかし彼はここまで、ほぼその“動き”のみで説得力を生んできた男だ。“その背中で”とも言い換えられるかもしれない。1人のアーティストとして、DJでもプロデュースワークでも文句が付けられないほどのハードワークとクオリティを貫き、自分の“夢”を追い続けてきた。全国区になる前にもがいた名古屋の街でも、日本中に名が轟いてからもその姿勢は変わらずだ。愚直なまでに自らの夢を追うDJ RYOWの思いは、13枚ものアルバムを完成させてもなお、潰えることはない。いったい、その原動力はどこにあるのだろうか。

DJ RYOWがモチベーションを保つためには、ニューヨークという場所の存在が不可欠だ。「『SKILLZ』(名古屋市千種区にあったショップ)の買い付けで、現金とデカいバッグだけ持ってニューヨークに行っとった21〜22歳の頃を思い出して、今でもその時代のマインドに戻れるね。当時は単純にニューヨークに憧れとった部分が大きいし、どこへ行っても『とにかくヤバい!』っていう感情で。でも、それから何度行っても全然飽きない。今は1年に2回くらい行くようにしとるけど、半年経てばもう流れとる曲もアーティストも変わっとるし、その変化とか熱量をいち早く感じられるのが楽しい。ラジオとかインターネット経由でチェックするのと、現地で聴くのはやっぱり違うし。あと、クラブとか誰かのライブに行っても誰も自分のことを知らないっていうのもむっちゃ新鮮。ニューヨークでは、ただのヒップホップヘッズ的なスタンスで常に勉強できとる感じ(笑)」

今回の収録曲でもある名古屋讃歌“Picture Me Rollin’ (feat. C.O.S.A. & Kalassy Nikoff)”でC.O.S.A.が吐き出した、「俺もRYOWさんも理由なら一つだけ / 夢中になれるものHIPHOPにやられっぱなし」というリリック通りの“理由”や思いが、ニューヨークではよりソリッドなものになるだろう。かの地はDJ RYOWにとって大きく新鮮な刺激にあふれ、そこでは誰も彼を知らない。その環境が、日本ではベテランと呼ばれる域に達したDJ RYOWを初心に戻すのである。そして、毎回のようにそこでリーダーアルバム制作のスイッチを入れるという。

「今回はちょうど1年くらい前(2022年2月)に行ったニューヨークで制作のスイッチが入ったかな。向こうのアーティストのライブに行ったり、クラブでいろいろなDJとか知り合いのヒップホップ関係者に会ったり。そうするといいヴァイブスがもらえて、『オレも曲作りてぇ』っていう気持ちになるし。なんか向こうのヤツらは自分の考えと全然違うっていうか…そもそもの話、日本ではいろいろ考えたうえで動くけど、向こうは日本以上にヒップホップが完全に生活の一部だからもっと自然。曲を作ることも、DJをやることもそう。それなのに、そこからもう一個上のレベルを目指して活動しとるのを見ると、いいなって思うし自分もだいぶ刺激を受ける。毎回ニューヨークで何かを吸収して、それを持って帰ってきて動き 出すね。リフレッシュの意味合いもあるけど、スイッチを入れるために行っとるのもあるかも知れん。日本で半年過ごすとちょっと考え方も変わっ てくるっていうか、やさぐれてくる(笑)。だから、1年前は帰国時に(新型コロナウイルス感染拡大対策で)1週間隔離されることが分かっとっても 行ったくらいだし」

そういった意味では、リーダーアルバムこそ、現時点でのDJ RYOWをはっきりと切り取ったものと言えそうだ(持ち帰ってきたものがDJプレイにも落とし込まれていることは言うまでもない)。再び層が厚くなりつつある地元・東海エリアのアーティストをふんだんに起用したのも、ラップ引退宣言後の“E”qualの一時復活も、YoungBoy Never Broke Againの楽曲などを手掛けるデンマークのプロデューサーチーム・UPNORTHとのコラボについても、まさに周囲を含めた“今”を詰め込んだ結果だ。そんな彼が追い続けている“夢”とは、果たして何なのか。

「今やっとる音楽を、世界に広げられたらいいなって。壁はもちろん多々あるけど、そういう細かいことは一旦置いといて、世界に発信したいね。ぶっちゃけ向こうに住めば何かしらは起こる気はするけど、じゃあ日本のヒップホップを向こうのヤツが普通に受け入れるかっていうとそれはまだ怪しい。ただ、ニューヨークのクラブで流れとる曲を聴くと、ちょっとずつヒップホップの中でもサブジャンル的なものが膨らんできとって。昔は完全にUSのヒップホップとR&Bしかなかったけど、今は例えばスパニッシュのラテンミュージックとかでもお客さんが歌いながら踊る、みたいな光景がある。その突破口はレゲエだと思うけど、韓国の音楽も世界に認められたし、それなら日本のヒップホップも“何か”が起これば世界に飛び出せる可能性は昔と比べて大きそうだよね」

一方で、「今のままでは難しいと思う」という客観的かつ現実的な視点も持っている。「昔よりは日本でもたくさんお客さんが入るようになって、若い子もいっぱい活躍しとるけど、一般的なメディアでヒップホップが取り上げられることはそんなに多くないし、音楽チャートにもヒップホップはほとんど入ってこない。iTunesチャートで数日入ったとかはあってもね。だからネクストフェーズに行けるのは、まずは国内のそういうところも盛り上げ切ってからなのかなって」。さらに、彼はこう続ける。「今回のアルバムを完成させた時に感じたのは、ずっと続けてればマジでまったく想像してなかったことが起きることもあるなって。作り続けとるからできることもあるし、やっぱり継続することが本当に大事だなって思ったね。ここまであっという間だったし、まあ歳は取ったけど、やれるだけやりたい」

手が届くところまで“夢”を手繰り寄せるには、今までやってきたことをとにかく継続し、地に足を付けながらさらに進化していくことが重要だと考えているというDJ RYOW。無論、その歩みを止める気はない。豪華なフィーチャリング陣が顔を揃えた今回の収録曲それぞれにも、さまざまな背景があるのだが、字数の関係で今回は割愛する。ただ、DJ RYOWが見据える先を知ることで、きっと彼が目指す“夢”への足跡と道標とも言うべき13曲+1曲を詰め込んだ本作「I Have a Dream.」もまた違った角度から聴くことができるはずだ。

Feb. 7, 2023

Text by Kazuhiro Yoshihashi

I Have a Dream.
DIGITAL

発売日:2023年2月8日

収録内容

1. INTRO feat. “E”qual
2. I Know What feat. ¥ellow Bucks, ANARCHY
3. MVP feat. Jin Dogg
4. Slide feat. eyden
5. Bling Bling feat. CYBER RUI, MaRI
6. あきら feat. SOCKS
7. Surfin feat. Candee, Lunv Loyal
8. All Through the Night feat. JP THE WAVY, SIRUP
9. 言ってみて feat. DADA & AZU
10. Ocean Of Emotions feat. EMI MARIA
11. Picture me rollin' feat. C.O.S.A., Kalassy Nikoff
12. No Pain No Gain feat. Pedro the GodSon, VILLSHANA, 2Marley
13. Better Days feat. SOCKS, E.R.I

DIGITAL
I Have a Dream.
CD

発売日:2023年3月8日
品番/価格:VCCD-2030/¥3,000+税

収録内容

1. INTRO feat. “E”qual
2. I Know What feat. ¥ellow Bucks, ANARCHY
3. MVP feat. Jin Dogg
4. Slide feat. eyden
5. Bling Bling feat. CYBER RUI, MaRI
6. あきら feat. SOCKS
7. Surfin feat. Candee, Lunv Loyal
8. All Through the Night feat. JP THE WAVY, SIRUP
9. 言ってみて feat. DADA & AZU
10. Ocean Of Emotions feat. EMI MARIA
11. Picture me rollin' feat. C.O.S.A., Kalassy Nikoff
12. No Pain No Gain feat. Pedro the GodSon, VILLSHANA, 2Marley
13. Better Days feat. SOCKS, E.R.I

Bonus Track
WHO ARE U? 2022 feat. TOKONA-X, ¥ellow Bucks

CD

FEATURING ARTIST


¥ellow Bucks

¥ellow Bucks

ANARCHY

ANARCHY

Jin Dogg

Jin Dogg

eyden

eyden

CYBER RUI

CYBER RUI

MaRI

MaRI

SOCKS

SOCKS

Candee

Candee

Lunv Loyal

Lunv Loyal

JP THE WAVY

JP THE WAVY

SIRUP

SIRUP

DADA & AZU

DADA & AZU

EMI MARIA

EMI MARIA

C.O.S.A.

C.O.S.A.

Kalassy Nikoff

Kalassy Nikoff

Pedro the GodSon

Pedro the GodSon

VILLSHANA

VILLSHANA

2Marley

2Marley

E.R.I

E.R.I

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